柴犬 乗りかかる 理由

若いオスの柴犬が女性のパートナーの足にまたがって、腰を押しつける。散歩の途中、急にパートナーの後ろに回り込み、飛びついて腰を振るオスの柴犬もいます。マウンティングと呼ばれる行動ですが、彼らは性的な衝動に駆られて、こんな問題行動を起こすのでしょうか。

女性の生理時に、オスの柴犬が性ホルモンの匂いをかぎとって反応するという説もあるりますが、そもそも動物の性行動は種特異性が高いのです。相手の種が異なれば、メスの柴犬はむやみに発情しないし、オスの柴犬は発情中の猫などを追い回しません。性の種特異性は、生物の進化には欠かせない要素です。同種の生き物が繁栄するには、自分とは異なる動物には性的衝動を覚えず、当然のことながら交尾行動は避ける必要があるのです。

そこで、オスの柴犬は女性のパートナーに性的な魅力を感じて、腕や脚などにマウンティングしたわけでないのは明らかです。では、この人に乗りかかる行動にはどんな意味があるのでしょうか。

一見、性的行動に思える行為は、儀式化されやすいです。たとえば、サルの社会では、上位にある者が下位のサルにマウントして、自分か優位に立っていることを強調します。おまえはまだ下っ端なのだから、自分に逆らうな、と伝える一種の儀式です。

犬社会にも、これが当てはまります。オスの柴犬に限らず、メスの柴犬が下位の柴犬に乗りかかって自分の優位性を示すこともあります。そこには、性的な欲求はひとかけらもありません。だから、オスの柴犬が女性に飛びつき、腰を振ったところで、その女性をメス犬と勘違いして行銷したわけではないのです。

また、優位性を示す目的もないはずだ。かりに、自分のほうが地位は上なんだぞと主張したいなら、人に飛びかかるでしょう。これは、子犬同士が相手の背中に前足をかけ、「ぼくのほうが強いんだよ」と支配的立場を演じ合って遊ぶ行動の延長上にあります。

ただし、人に飛びつく行動も誤解されやすいです。ほとんどの柴犬は、優位性を示すためではなく、たんにうれしくて人間に抱きついてきます。うちの愛犬もそうです。犬好きの人を柴犬はすぐに判断できるので、そんな人には歓迎の飛びつきをやろうとするのです。

その際、オスの柴犬はかなしいことに、喜びが頂点に達し、非常に興奮すると勃起してしまいます。そう珍しくない反応です。自分の意思ではなく、興奮状態に陥ると、ひとりでに立ってしまうのです。あまり、見た目にいいものではありません。女性は「いやあね」といやがるけれど、性的に熱くなっているわけではないので、天罰方式でいさめてください。

その昔、通りで堂々と交尾中の犬たちに人はバケツで水を掛けていた。効果てき面です。犬はびっくりして身体を離します。そこで、その効果を利用して、足などにまたがったり、立って飛びついたりしたら、ほかの人に物陰に隠れてもらい、水鉄砲を勢いよく噴射します。すると柴犬の興奮は、はたと冷めるのです。