柴犬 健康管理 救急箱

目にゴミなどの異物が入ると、柴犬は前足で目をこすったり、床にすりつけたりします。手元に犬用の目薬がない場合は、とりあえず刺激性の低い人間用の目薬でゴミを流しとりましょう。片手であごを支え、もう一方の手を柴犬の目の真上ではなく、頭の後方から近づけて目薬を落とします。こうすれば、柴犬はびっくりして逃げ出すこともありません。

便秘の場合は、浣腸を試しましょう。人間用のものでも、構いません。常備薬として保管している人は、浣腸を実施できます。

熱があるかどうかたしかめるとき、人間はおでこに手のひらを当てるますが、柴犬の場合は、違います。鼻の頭や毛の少ないお腹を、さわってみましょう。日ごろからときどき手をふれて、柴犬の平熱を手で覚えておきましょう。

迷信のように、鼻の頭をさわって乾いていたとしても、病気、とはいいきれません。朝、起きたばかりの柴犬の鼻は、乾燥ぎみです。身体を動かし始め、健康状態にあるときは、ほどよく湿っています。熱があると、この湿り気が蒸発するので、乾ききってしまうのです。

念のために、体温を測ってみましょう。柴犬の場合は、体温計を肛門からさし込んで、直腸温を測定します。動物専用のものは棒状体温計ですが、人間用でもさしつかえありません。1分計のデジタル式なら、短時間ですむし、割れにくいです。柴犬がいやがらないように、身体を撫でて「大丈夫だよ」となだめながら、片手で尻尾を持ち上げます。もう一方の手で体温計の先を肛門に挿入します。その際、あらかじめ体温計にサラダ油などをつけておくと、痛みは断然やわらぎます。その体温計の先端部分（2センチほど）をさし込み、数値が一定するまで待ちます。

柴犬の平熱は、人間よりも高いです。直腸温では、38度から38.5度くらいです。運動後や興奮しているときは、これよりもやや高めになります。また、子供の柴犬は安静時でも平熱は高めで、大型になると低めになります。いずれにしても、40度以上なら、病気の可能性も考えられるので獣医師の診察を受けましょう。

柴犬のためにも、救急箱を用意しておきたいところです。ふだんの健康管理にも、応急処置のときにも役立ちます。

中に収めたいのは、

• 浣腸（少量の食用油は便秘剤として利用できます）
• 体温計
• 添え木用の厚紙や平たい棒
• ハサミ
• 包帯
• 脱脂綿
• ガーゼ
• ピンセット
• 絆創膏
• 綿棒
• 常備薬として、消毒用のクリーム剤
• 過酸化水素水の消毒液（オキシドール）
• 傷口を消毒・殺菌するためのヨードチンキ
• 犬用目薬
• フィラリア症の予防薬
• 持病や治療中の病気のための薬

かかりつけの獣医師や動物病院の連絡先を記したメモを、この救急箱に貼っておけばいざというときでもあわてずにすみます。

柴犬は、パートナーに気に入られたい、と願う動物です。パートナーに注目されて、喜んでもらえることが、柴犬の生きがいです。それを拒否されれば、やがてノイローゼにかかってしまいます。その症状は、

• ステレオタイプ（常同行動）といって、同じ動作をくり返す
• サークルの中をぐるぐる回る
• 前足をかみ続け毛が抜けてしまう
• 自分の尻尾を追い回す
• 排泄をコントロールできずあちこちに垂れ流す
• 庭で、穴掘りに精を出す

こんなしぐさが見られたら、そのつど原因をたしかめる必要があります。

• 柴犬をしつけるのにいやけがさして、愛情を断ち切ったのではないか
• 庭で鎖につなぎっぱなしにしていないか
• 運動量を相当、必要としているのに、散歩の時開か短すぎないか
• サークルの中に長時間、閉じ込め拘束状態に陥らせていないか
• 夫婦の離婚の危機や子どもの非行など、家族間の精神的な崩壊、家庭内不和がありはしないか
• パートナーの態度が、一貫していないのではないか
• 一つの行動に対して、あるときは可愛がり、別の日には叱ったりする

こんな人間側の情緒不安定が、柴犬をノイローゼにするのです。

柴犬は程度の差こそあれ、人間以上に繊細です。周囲の出来事を観察し、家族の心の内を敏感に感じとるのです。獣医師は異常な行動をくり返す犬の相談を持ちかけられると、まずパートナーやその家族に注意を向けます。ふだんの柴犬への接し方から、アプローチするのです。柴犬のノイローゼは、そのほとんどが人間側に問題があるのです。

ノミやダユに悩まされ、掻痒感が柴犬をノイローゼにすることもあります。この場合も、結局は、柴犬の環境にまで配慮することができなかった人の不手際です。

柴犬に対して、いつでも模範的ないい人である必要はまったくありません。しかし、犬の心の健康を守るのは、パートナーの変わりのない愛と配慮の気持ちです。